「世界文化遺産 姫路城現代美術ビエンナーレ2008」展によせて

兵庫県知事 井戸 敏三

新しい文化の発信をめざし、「世界文化遺産姫路城現代美術ビエンナーレ2008」展が盛大に開催されます。心からお喜びします。

今春開催された姫路菓子博は、全国の菓子文化と90万人を超える人々が集い、笑顔と元気あふれる博覧会になりました。 すばらしい芸術文化は、私たちの心に潤いと明日への元気を与えてくれるとともに、人と人、地域と地域との交流を育みます。

今回、「関西姫路は新しい」をテーマとして、兵庫・姫路から新しい文化を創造し、発信する展覧会が開催されることは、 本当にうれしいことです。

豊かな創造力で新しい表現を生み出す現代美術は、既存の価値観に囚われない魅力にあふれ、 新鮮な感動を呼び起こしてくれることでしょう。また、子どもを対象として造形教室や作家による作品説明会など、 子どもから大人まで幅広く楽しめる企画となっています。

世界遺産・姫路城のもつ伝統文化の美しさと現代美術の魅力を通して、芸術文化に親しむ人々の交流が大きく 広がっていくことを願っています。

これからも、兵庫・姫路のもつ多様な個性や魅力を生かしながら、地域が輝き、 一人ひとりがいきいきと暮らす「元気で安全安心な兵庫」の実現をめざしていきます。

開催でご尽力いただいた皆様に感謝するとともに、展覧会のご成功と出展された皆様の ご健勝での今後ますますのご活躍を心からお祈りします。


姫路市長 石見 利勝

第1回「世界文化遺産姫路城現代美術ビエンナーレ2008」展、姫路城を真正面に望む、 イーグレひめじにおいて開催されますこと、心からお祝い申し上げます

ビエンナーレは、2年に一度開かれる美術展覧会ですが。第1回目の本年は、全国の美術家57名の絵画や彫刻が展示されるとともに、 木村重信氏を講師として記念講演会を開催されるなど、その幕開けにふさわしいものとお聞きしております。

本市におきましては、市民の皆様が優れた文化・芸術に触れ、親しむとともに、 幅広い文化・芸術活動を行うことができる環境の充実に努めることにより、個性的な文化の創造と発信に取り組んでいるところであります。

そのような中、姫路城現代美術ビエンナーレ委員会の皆様のご尽力により、 このようにグレードの高い美術展が継続して開催されることになり、姫路市から全国に向けて優れた美術文化を発信し、 姫路地域の美術文化の振興と美術家の育成に大きく寄与するとともに、まちのにぎわい、活性化につなげる試みとして大いに期待しております。

最後になりましたが、このたびのビエンナーレ開催に向けた鹿間厚次郎さんはじめ姫路城現代美術ビエンナーレ委員会の 皆様のご努力に心から敬意を表しますとともに、今後も姫路市民の芸術文化の向上にお力添えいただきますようお願い申し上げます。


姫路城現代美術ビエンナーレ委員会 米谷 啓和

現代美術の楽しみ方

ビエンナーレ・・・ヨーロッパの文化都市を連想させるすてきな響きである。

それを姫路でやろうとしている人がいる・・・昨年の10月にそう聞いたとき、 「姫路」と「ビエンナーレ」とのギャップにうろたえるとともに、そうか、とうとう姫路でも・・といううれしい感慨におそわれた。

現代芸術とは、作家が社会や人間の本質あるいは世界の関係性を抽象して取り出してきて、 わたしたちの眼前に突きつけるものである・・・と自分なりに定義している。突きつけられたわたしたちのほうには、 その内面にちょっとした文明の衝突と融合(あるいは拒否)がおきる。これは大人にとっては、 これまで知識や体験から身にまとった世界観のリセットをせまられる事件であり、自分を変えるゆとりのない、 自我を固めすぎた人にとっては現代美術とは無縁のもの、無価値なものと決めつけられがちである。

いっぽう自我の揺らぎをたのしんだり、幾つになってもよりよい自分を追求し続けている人にとっては、 現代美術は作品との対話をとおして、自己との対話をみちびく尽きせぬ泉である。そこには、自我と世界との境界をセッティングし直す たのしい作業がまちかまえている。その点、イメージの世界に生きている子どもたちの反応は愉快だ。解釈抜きに作品に向き合う感性が 「教育」されずにゆたかに残っているからだ。

そういえば、姫路城も400年前の築城当時は現代芸術ではなかったか。 幾重にも重なる千鳥破風と唐破風の構成やさまざまな意匠を持つ狭間(さま)。 そう思いを馳せると、竣工当時の名工たちの得意げな顔が目に浮かぶ。今会でも作家たちとの出会いが楽しみのひとつである。 知的な苦闘の末、ようやく折り合いをつけたこの作品を生み出した人とはどんな人間か・・・会ってみたいし、 話してみたいという鑑賞欲がかなえられる機会が用意されているのも見逃せない。

さいごに、ウィーンやニューヨークに行くと建築・美術・音楽・都市計画といった芸術がまちの歴史とともに息づいているのを感じる。 その時代に呼吸をし、感じ、考え、造った芸術家や市民の軌跡とでも言おうか。まちに生きざまがあるのである。「生きざまが見える都市」・・ わがまち姫路がそういうたたずまいをみせる都市になるよう、今年から始まるビエンナーレが回を重ねることで成果を挙げられるならうれしい。